皆さんこんにちは!キングフィッシャースタッフの手塚です。
今回は、前回の記事の続き、「乙連沢地域の秘密」についてお話ししていきます。
1)採取したいきものを地図で見てみよう!
こちらの地図は乙連沢地域の全体図。そこに採取したいきものの種類を記載し、見やすくしたものです。
この地図を見ると、前回の記事でもお伝えしたように、アブラハヤとアメリカザリガニ、そしてドジョウは乙連沢地域全体に生息していることがわかります。まさに乙連沢地域の特色ですね。
そしてもう1つ、気づくことはありませんか?
実は、キングフィッシャーより上流・キングフィッシャー周辺・キングフィッシャーより下流の3つのブロックに生態系が分かれている可能性が高いのです。
2)3つのブロックそれぞれの解説!
まずは3つのブロックにそれぞれ名前をつけていきましょう。
キングフィッシャーよりも上流部、カジカやサワガニが見られる地域を乙連沢地域でかつて豊富に見ることができたいきものが多く生息する地域という意味の「原風景ゾーン」。
キングフィッシャー周辺、私有地も含まれるため、従来のいきもの調査ではあまり深く調査してこなかった場所「潜在ゾーン」。
キングフィッシャー下流部、アブラハヤやザリガニ、ドジョウが多く生息しており、乙連沢地域の生態系の特徴が色濃く出ている「洗練ゾーン」。
キングフィッシャーを境に3つのブロックに生態系が分かれているように感じませんか?
どうしてこのような生態系になったのか、理由はいくつか考えられますが、私自身が思う「仮説」をお伝えしていこうと思います。
3)乙連沢地域の生態系の「仮説」とは?
キングフィッシャーの前身となったニジマスの養殖場は今から約40年前に乙連沢の地に誕生しました。
養殖されている魚を逃さないよう、川の上流と下流には「スクリーン」と呼ばれる流出防止の網を設置することで、乙連沢地域の生態系が分断されることになりました。
キングフィッシャーの下流は様々な地域から流れる水路とつながっており、いきものが行き交うことによって生態系の洗練を繰り返しますが、スクリーンによってさえぎられたキングフィッシャー周辺地域や上流部は乙連沢地域本来の生態系が守られ続け、下流部のみ今現在のような洗練された生態系が作り上げられていったのだと考えられます。
そしてもう1つはキングフィッシャー上流部は湧水地であること。上流部はきれいな水が1年中出続け、他の河川と交わることがないため、水質悪化の影響をうけにくい一方で、キングフィッシャーより下流部は様々な水路が流入することから水質が悪化し、選ばれたいきものしか住めなくなってしまっている可能性もあります。
この2つはあくまで仮説です。もしかしたら今回調査した場所の他には豊かな生態系が広がっている可能性もありますし、たまたま他のいきものが見つけられなかっただけかもしれません。
地域全体の環境を守っていくためには、早合点せず、粘り強い調査が必要だと考えます。
4)今後どうするの?
これからも定期的ないきもの調査は続けていく必要があります。今回のデータをもとに、いきものの数が大きく変わっていないか、生息している場所には変わりがないかということを調べたり、今までいきもの調査をしたことがない場所で調査し、住んでいるいきものを調べていく必要があると考えます。
しかし、確実に言えることは乙連沢地域には他の地域では簡単に見ることができない様々ないきものが今も元気に生きていること。このいきものが10年後も100年後も見ることができるように守り続けていかなければなりません。
いきもの水族館を見学した方も、今回ブログを読んでくれた方も、これからもずっと乙連沢地域の自然を見守っていただければ幸いです。
また、今回の調査データは乙連沢地域環境保全会を通して、大田原市に提出いたしました。今後もキングフィッシャー周辺の環境の保護に努めて参ります。